剣詩舞(けんしぶ)は、剣舞(けんぶ)と、詩舞(しぶ)という2つの舞踊があり、どちらも吟詠(ぎんえい)に合わせて舞う芸道です。

古武道の格式と、詩の心を表す芸術性をあわせもつ、2つの舞の特徴を紹介します。
 

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剣舞とは

剣舞(けんぶ)は、吟詠(しぎん)「中国の漢詩や日本の漢詩や和歌に節調をつけて詠うこと」に合わせて刀や扇を持って舞う舞踊です。
古武道の型を尊重した動きに特徴があり、刀の差し方(帯刀)や斬り方、構え方といった基本動作に剣術や居合術などの刀法、礼法の影響を受けています。
演技者には、武人の心構えや武士道の精神、気迫、格調を備えていることが求められます。
題材となる詩の心を理解し、武道の型を芸術的に昇華したところに剣舞の魅力があるといえます。

 

剣舞の衣装と小道具

剣舞の始まりが武士などにあることから、衣装の多くは紋付きとはかまの和装となっており、発表会では一如流の紋付きはかま、お稽古では稽古着着用と定めています。

詩の内容を写実的に衣装で表すことはありませんが、戦いの場面で鉢巻やたすきを用い、場面の激しさを演出することがあります。

剣舞の名の通り、持ち道具の主役は刀です。江戸時代の武士が持っていた大小2本の刀のうち、剣舞で使用するのは大きい打刀(うちがたな)のみとなっています。

昔は真剣を使うこともありましたが、現在は模擬刀を使用します。
模擬刀は居合刀ともいい、刃金こそ入っていませんが、真剣と同じ造り、同じ重量があります。
また、アルミ製の軽い模擬刀もあります。

持ち道具には扇や、演出によっては長刀などの武具も登場します。

剣舞の成り立ち

広義の剣舞の起源は古く、奈良・平安時代には舞楽(ぶがく)や神社の神楽(かぐら)があり、中国(漢代)にも剣を持った舞があったことが伝えられています。

吟詠によって演じる現代の剣舞は、明治維新後に剣士・榊原健吉が始めたというのが定説です。
当時、武芸者たちが剣術試合を行っており、その余興として剣舞を披露したところ好評を得たといいます。

その後、鹿児島出身の日比野正吉と高知出身の長宗我部親が剣舞を芸道としてまとめたことから、さまざまな流派が生まれました。

戦後は舞台芸術としてその芸術性を追究し、現代剣舞として優れた演技を生み出しています。

詩舞とは

吟詠を伴奏に舞う舞踊を詩舞といい、主に扇を持って舞うところが剣舞と異なります。

吟詠の詩は漢詩だけでなく、和歌や新体詩なども幅広く用いられます。
「詩を聞かせ、そして舞う」といわれ、吟と舞が一体となった演出が見どころです。

演技者は詩の心をつかみ、その詩の世界をある時は具体的に、ある時は抽象的に、緩急自在に表現します。

 

詩舞の衣装と小道具

詩舞の衣装は、剣舞同様 発表会では一如流の紋付きはかま・和服、お稽古では稽古着着用と定めています。

例えば、歴史上の人物が詠んだ詩の場合にはその人物を写実的に表し、情景を詠んだ詩の場合には詩の心を抽象化して表すなど、詩の内容にふさわしく、振付の意図を盛り上げる衣装が用いられます。

扇は、日本舞踊などと同様に舞扇(まいおうぎ)を使用します。

演劇のような大道具は使わずに、扇を刀や笛などに見立てたり、身分や役柄を表す小道具として演出に用います。

詩舞の成り立ち

中国には、詩を吟じ、それに振りを付けて舞う様子が記された3000年も前の詩が残されています。
奈良・平安時代に多くの中国文化がもたらされたときに、そのひとつとして詩舞が伝えられました。

現代の詩舞は、明治維新後に剣舞が誕生したことに始まります。
剣舞に女流の剣舞家が登場し、好評を博したことから、女性剣士が刀の代わりに舞扇を用いることが考案されたといわれています。

現在は、剣舞の格調ある様式を受け継ぎ、総合的な舞台芸術として発展しています。